トンボを逃がしてやる心

毎週、金曜日の夕方の小学生・低学年のクラスが終わると、ホっとする。昨年までは、とくに、手のかかる腕白坊主のいる騒々しいクラスで手を焼いていたのだが今年度に入ってからは成長したのか大声を出さなくてもいいようになった。お母さん方とのコミュニケーションも、うまくいっているし、ありがたいことである。きょうは、その中の虫好きのA君が、糸トンボのような(子供達は、むかしトンボといっていた)小さなトンボを教室に来る途中で捕まえたらしくて、指の先につかまえていて放そうとしない。それでは、授業にならないので、何とかしようと、虫かごはないので、プラスチック容器のカップに入れて廻りをネットの袋で覆って息ができるようにしてやった。それでも、自分の手元からは放そうとせず気が散るので、その子から預かって場所を変えて遠くからでも見えるようにしたのだが、気になるのか「トンボがみえなくなった」と一時間中言っていた。終わってから、今頃は冬に比べると陽も長くなったし、お迎えのお母さんやお父さんの姿も見えないので、途中まで歩いて出ることにした。すると、入れ物から出してまた指先にトンボを置いているのでどうするのかと思っていたら逃がしてやるつもりらしい。てっきり、家まで持って帰るのだろうと思っていたけれど、えらいなぁ〜と感心した。そのトンボを見つけた場所で、飛び立っていく姿を見送って、安心した様子だった。そして、男の子も、女の子も、元気の良い歓声を上げながら、飛び回るような軽やかなステップで雲を散らすように帰っていった。その後ろ姿を遠く目で追いながら幸せを感じる瞬間でもある。