お散歩

「手ぶらで平坦な信号の無い道を30分から1時間毎日歩くと良いようです」という、バカボンさんのアドバイスにしたがって、夕方、家の近くをお散歩した。ふと、足をのばして久しぶりに「三段池」と呼ばれているあたりまで行ってみた。子供達が小学生の頃は、ブルーギルブラックバスアメリカザリガニとかを取りに行っていた場所だけれど、今は、池にかかっている橋の左側の方は、ほとんど水が枯れて、草ぼうぼうで黄色い背高泡立ち草が生えていた。向こうの方に、わずかに残っている水面を数羽の白鷺が優雅に泳いでいるのが見えた。右側の方は、水はたくさんあったけれど、エメラルド色というよりも、雨のあとのにごった緑色で、どんよりとしていた。背景に見える家々などぼんやりかすんで、なんだか、目に映る風景が美しくない。心の中にある原風景と違うのだ。
 まだ、次男が生まれてなくて、長男が幼稚園に行く前の2歳ごろに、可愛いお昼のお弁当をつめて、お天気の好い日は、お散歩に来ていた場所。土手を駆け下りて池の水辺の方にいこうとする幼いわが子を追いかけて連れ戻し、一緒に、土手でお弁当を広げたり、シャボン玉を飛ばしたりしていた秘密の場所・・・向こうに見える家々の形の変わった赤い屋根の色など、まるでメルヘンのような美しい風景だった・・・今、目の前の風景は、つまらない。それは、わたしのこころの中の風景を表しているのだろうか? 今すぐにも息子に逢いに行きたいというような衝動を覚えた。あの子は、日本にいないという空虚感がふいに身を襲ってきたのだった。そのストレスが、腰痛の原因なのだろうか?まさかね・・・
 帰ったら、斎藤 澪奈子 さんの『ヨーロピアン・ハイライフー青春のロンドン、フィレンツェ』という中公文庫の本が届いていた。絶版なので、マーケットプライスで7円でゲットしたというもの。まだ、最初しか読んでないけれど、フィレンツェでは、ウッフィッツィ美術館まで歩いて3分という場所に住まれていたみたいだ。ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」や「春」という作品や、メディチ家の赤の紋章の部屋のあるルネッサンス美術の宝庫のような美術館を彼女もお気に入りだったとは、驚いた。
 夕方、夫が帰宅して「きょうは、ありがとう」って、いうと「ホントに参っちゃうよ」と笑っていた。「今まで、貴女からの電話で、すっ飛んで帰ってきて正解だったのは、あれ、どっちの子だったかなぁ・・・喉に異物を飲み込んで、ボクが逆さにして口の中から取り出して一命を取りとめたのは・・・、あのときは、危なかったよね。それに、比べたら、今回のは、何? 朝、いうの忘れていたけれど、夜中に急に居間の電気が消えたからって・・そんなこと、いちいち、いうかぁ〜(笑)」「だって、帰ってきて真っ暗だったら困るでしょう?それに、途中で帰ってきてなんて、言ってないし」「電気が急に消えたって聞いたら、接触がわるいかどうかだろうって想像したけど、口で説明したって通じないと思ったからね・・・」
 一日のうち、別の場所にいて2人で同時に子供がまだ幼かった頃の記憶を思い起こしていたのは、不思議だった。自分の中にある愛、母親が子供を愛するのは、本能的な愛で、それは、自己愛だったり執着なのではないかと思っていた時期があった。義母を見ていても、結婚当初は、姑のことを好きな気持ちと、別居はしていても夫を介在して立ちはだかる義母に葛藤を感じてしまう自分とで随分苦しんだ。あんな風な女の生き方はイヤだと思った。なのに、表現の方法は違っていても、自分の中にある息子たちへの愛は、同じような気がする。そういう意味では、義母と同じく息子2人を育てた経験は、その過程を通じて女として少し寛容な気持ちで理解できるようになってきた。「子供は、魔物よ」と義母はよく言っていたっけ・・・今になってくると、義母の嫁に対しての義父とは違う複雑な心境だとか手にとるように理解できたりもする。でも、そういうドラマは、とっくの昔に卒業したから、今はとっても楽チン・・・
 魂のレッスンも愛のレッスンも早めに終了するに限る。なんて、まだ悟ったわけじゃないけれど・・・だから、思いっきり、大恋愛をするというシナリオも、まだ、ちょっとだけ、残しておこうっと・・・でも、地球上での男女の恋愛は、ジェラシーだとか所有欲の感情だとかお互いのエゴが関わっているコントロールドラマのようで苦手だから、相手は、異星人がいいなぁ・・なぜならば、ツインソウルが地球上にいるとは限らないから。愛の交換も高次元のエネルギー交換だったりして、オーラとオーラが融合するときのエクスタシーみたいな思いっきり、ぶっとんだのが、いいなぁ〜(笑)そのときは、夫に「取り扱い説明書」を書いてもらって引き渡してもらう約束になっているのだった。まだ、覚えているはずだけど(笑)なかなか、宇宙船からのお迎えがこない(笑)あーまた、変なことを妄想してしまった・・地球の日常生活をきちんとしなくては!