虹色ラムネの町

lyra2006-05-08

 お正月明けに、一緒にお食事したお友達と何の気なしに応募した「湯けむり香る杖立温泉と天領の日田・豆田散策の旅」が、当選して、仲の良い女友達3人と早朝からお出かけ・・・実をいうと、わたしの中には「温泉旅行」でリラックスするという行動パターンは、インプットされてはいなかったのだけれど、5歳年上の古い付き合いの友人の喜んでいる様子を見てると断りきれなくて、落ち着いて穏やかな性格の同い年のお友達と3人の組み合わせなら和気藹々のハーモニーになるのはわかっていたから、フラワーサークルのレッスンをお休みしてお付き合いした。バスの出発時間は、7時10分だったけれど、6時45分に3人で待ち合わせて、一台の車で集合場所まで・・・観光バス2台が待っていた。どんな旅になるのかなぁ〜と、まだ、あんまり乗り気じゃなくて座席が隣あわせになったルンルン気分の彼女に、人のスケジュールも考えてほしいのに(当選しても日にちは選べたから)と思いながらも、20代の子がもっていそうなブランド物の小さな白いバッグを持ち、ベージュのスラックスにベージュの紐靴を履いてオシャレしてる彼女を見ていたら、素直に喜んでいない自分がアホらしくなってきて、「まぁ、いいか」という気になってきた。
 最初に訪れた場所は「おしゃれ工房」という革製品やムートンのカーペットや毛皮のお店。これが、結構、おもしろかった。バスの中で3つのクイズが出されて、それを回答しながらの説明を聞いたあとで、2階の展示会場へ・・・ここは、問屋さんのようなところで、一般には小売されないのだが、こういう団体さんでの入場では、購入できるみたいで高価なカシミアのコートやジャケットが半額でしかも金利なしの分割払いだったりとかで、目の保養も兼ねて魅力のコーナーだった。いつの間にか、3人にべったりとくっついて回る係り員の女性と親しく会話するようになり、このあたりくらいから、だんだんと旅のおもしろさの気分の中に浸る覚悟が出てきた。しかし「動物愛護協会からクレームつきませんか?」とか、質問したけれど、あんまり、真剣には受け止められなかったみたいだ。わたしは、毛皮は日本の風土には必要のないものだと思っている。にもかかわらず、若い頃、外側はベルベットでインナーがミンクのクリスチャン・ベルナールの黒一色のロングコートをある展示会場で一目見てどうしてもほしくなって義父と夫に買ってもらった。それには、訳があって、春に結婚式をあげ、夏休みにヨーロッパ(ドイツ)に新婚旅行に行くつもりが、すぐに長男を身ごもってしまって、つわりでいけなくなってしまったから、その代わりの品物というと語弊があるけれど、きっとそんな思いがあったような気がする。一目見た瞬間、虜になってしまった。にもかかわらず、日本では着る機会がなくて後に冬のヨーロッパを旅したときに実に重宝した。毛皮はオシャレなどではなくて、寒いヨーロッパでは生活必需品なのだと思った。
  そのあと、バスは一路、杖立温泉へと向かい、大広間に用意された「杖立御前」をいただいたあとは、いよいよ温泉。杖立川の清流を眺めながらの露天風呂は温泉嫌いのわたしにも結構楽しめた。それに、親しい女友達同士の裸のお付き合いというのも、なんか新鮮というのか不思議な気がした。熊本から、今度は大分の日田・豆田の昔ながらの街並みを「観光マップ」を片手に歩く。バスを降りて、最初はクンチョウ酒蔵資料館。にごり酒や生酒の試飲をした後、「旅だからできるのよね」と吟醸酒アイスを歩きながら食べる開放感。気がついたのは、この町のアチコチで見かける「ゆず胡椒」。先日の地鶏屋さんの炭火で焼いた焼き鳥に「ゆず胡椒」が添えられていたのが珍しかったのだけれど、ここでは普通に置いてあって、他にも「しいたけ茶」やゆずぽん酢、醤油、味噌、くず羊羹、いろいろあった。今回一緒に来れなかったお友達には、杉の下駄を3人でお土産に買ってあげた。わたしも、そこで、杉のサンダルを買って履き替えた。少し歩きやすくなって、さらに歩いていると、店先に、昔なつかしい味「虹色ラムネ」という天然の7色をしたラムネが並べてあって、なんだか、ホっとするような感じがした。
 最後に、TVでも紹介されたという、すっぽんのお店へ。「味噌こうじ、きくまろ」さんという、おそろしく早口でおもしろいおじさんの落語か漫才みたいな講釈に、お上品で滅多にケラケラと笑ったりしない、同じ年の友人が隣の席で笑い転げていた。このおじさんのこと、いい人だなぁと思った。こういう世界もいいなって・・・3人とも「すっぽんスープ」を買った。
 行き帰りのバスの中、恋愛経験豊富な5歳年上のお友達と話していると「わたしのような大人の女からしたら、貴女は少女ね」と彼女に言われる。だけど、恋愛観を含めた価値観や人生観に違いはあるのに、こうして一緒に旅してるという不思議さにお互いが気がついて、理屈っぽく「多様性の中の統合」なんて言葉を持ち出してみたり・・・言いたいことが言い合えるのも仲の良い証拠なのかもしれない・・・楽しい一日だった。